9月議会に、請願が1件提出されていることを知った。「川口市議会議場に国旗及び市旗を掲揚することについての請願」。
その「要旨」「理由」をみてびっくりした。

 歴史ある川口市議会において本来議場に掲げられてあるべき国旗及び市旗が掲げられていない。国政の縮図が地方議会である。そのあるべき姿を議論する場が川口市議会の議場であり、その象徴として議場に国旗及び市旗が掲げられることはごく自然のことである。したがって、誇りある川口市議会としては、「国旗日の丸」と「川口市旗」を中央に掲げていただき、これまで以上に議論し、川口市政繁栄に資することが最も重要と捉えここに請願するものである。
(請願「要旨」)

 再度、訴える。国政の縮図が地方議会である。国の行く末を思い、川口市の産業・文化の発展と次世代を担う子ども達と市民の互いの郷土愛の心の涵養を図るためにも、国旗及び市旗を議場に掲揚することを求め請願する。
(請願「理由」一部引用)

「国政の縮図が地方議会である」とあるが、これは誤解だ。
地方自治体の役割は、地域独自の事情を鑑みながら、「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」(地方自治法第2条)ことだ。各地域にはそれぞれ独自性・多様性があり、国政とはおのずから異なる。そういった「地域の特色、らしさ」を無視して画一的に「国政の縮図」などと規定して、どうして「郷土愛の心の涵養」が図れるだろうか。

また、制度としても、国会が「国権の最高機関」(日本国憲法41条)であるのに対し、地方自治体は二元代表制。住民参加の方法も異なる。その点でも「国政の縮図」などではない。

戦前の反省から、日本国憲法には「地方自治の本旨」がしっかりと規定され、地方自治法の成立により具体的に結実した。その後も地域の実情にきめ細かに対応できるよう、機関委任事務の廃止や議決事件の範囲の拡大、国からの財源委譲など、細かい改良を重ねている。地方議会を「国政の縮図」として「あるべき姿を議論する場」などと規定することは、地方自治の実現のためにコツコツと努力を重ねてきた先人の努力を愚弄するものだ。

議会事務局から頂いた書類は提出者欄が消されているので、誰がこの請願を出したのか判らない。地方議会に請願を出すのであれば、少しは地方自治について学んで欲しいところだ(中学の社会科と高校の公民科「政治・経済」で学ぶ)。驚くべきは、地方自治の本旨をまさに具現化すべき任にある川口市議会議員が、この請願の紹介者となっていることである。自民党・公明党と無所属の議員たちだが、きちんとこの請願に目を通して紹介議員となったのだろうか。地方議員としての資質が問われている。

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(2016-09-29追記)
「提出者は川口市退職校長会」という情報を頂き、また紹介議員のブログでもそう記載されていた(情報を下さった方、ありがとうございます)。校長先生まで務めた方々が、中学・高校で学ぶ社会科の基本的な理解にさえ欠ける、しかもそれを地方議会への請願で堂々と披露してしまうというのは嘆かわしい。もう一度、地方自治の役割を学び直していただきたい。
(文章が怖いとの指摘を頂き、趣旨を変えないまま表現を変更しました)

(平川みちや)

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Author: MichiyaHIRAKAWA

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